南千歳から夕張を結ぶ石勝線を紹介します。かつては石炭を運ぶ大動脈として活躍した石勝線ですが、現在は利用者の少ないローカル線となっています。廃線の議論もなされている石勝線の魅力を、一駅ずつ巡りながら紹介していきます。
石勝線は炭鉱とともに歩んだ路線!炭鉱の歴史に思いをはせて旅をしよう
北海道には広大な大地があり、豊かな自然環境の中で育まれる農作物や畜産物、そしてその周りに広がる海で行う漁業が産業の中心です。しかし、高度経済成長期ごろまで、北海道では「炭鉱」が中心産業のひとつとなっており、特に全国的にも有名な夕張市は、石炭の豊富な採掘量を背景に発展を続けていました。
そんな夕張の炭鉱に関する輸送を一手に担ってきたのが、夕張市の東にある新得町から、札幌の南側の玄関口・千歳市を結ぶ「石勝線」です。元々1892年に「夕張線」として誕生し、追分駅から夕張駅間を運行していた石勝線ですが、1981年になって東は新得駅、西は南千歳駅まで路線が延長されて、現在の形となりました。
石勝線の起点となっている南千歳駅。この地から、132キロに渡る長い旅が始まります。
石勝線の終着駅である新得駅。新得駅からは、道東・十勝地方に入っていきます。
夕張における炭鉱は、1960年代前半までは国の基幹産業のひとつにもなるほど重要視されていたエネルギー源のひとつでした。しかし、1962年に日本で原油の輸入自由化が行われ、「エネルギー革命」によって石炭から石油へ主要エネルギーが移り変わると、夕張の炭鉱も徐々に規模を縮小せざるを得なくなりました。
石勝線が南千歳から新得まで開通した1981年には、93名もの死者を出した「北炭夕張新炭鉱ガス突出事故」が発生。炭鉱の衰退は決定的となり、以降炭鉱事業は縮小を続けて1990年までに夕張市内の炭鉱はすべてが閉山となりました。
石勝線は、このような炭鉱事業の隆盛を感じられる路線です。特に夕張近辺における駅では、実際に炭鉱輸送などに使われていた車両やレール、器具などが展示されていることも多く、炭鉱の歴史を実際に見て、触れて体感することが可能です。かつて北海道を支えた炭鉱の姿に思いをはせながら、ゆったりと列車に揺られてみてはいかがでしょうか。
北炭夕張炭鉱の跡地。石勝線の旅の中では、このような炭鉱遺産を数多く見ることができます。
夕張支線は廃止間近!貴重な炭鉱遺産を目に焼き付けておこう!
石勝線は、南千歳駅から新得駅まで向かう本線と、本線の中間部にある新夕張駅から夕張市内に入って、夕張駅まで進む「夕張支線」の、二つの路線で成り立っています。このうち、夕張支線は追分駅まで含めて、炭鉱事業関係の輸送に大きな役割を果たしていました。
炭鉱事業縮小後、特に大きな打撃を受けたのがこの「夕張支線」であり、近年の夕張支線は路線の利用者がほとんどおらず、そのため運行本数も削減されることが続いていました。
夕張支線の終着駅、夕張駅の時刻表。現在、夕張支線では上下線5本ずつの運行しか行われていません。
そしてついに2016年夏、JR北海道は夕張支線の近年中における廃止を発表しました。夕張支線は早ければ2019年中に廃線が行われる方向になっており、炭鉱を支え続けた路線を見られるのは残りわずかの期間のみとなっています。
廃線が決定的となっている夕張支線も、夕張市における炭鉱事業の貴重な遺産のひとつです。ぜひとも実際に訪れてみて、炭鉱の歴史を今に伝える夕張支線の魅力も、ぜひとも実際に訪れてみて自分の目で確かめてみてはいかがでしょうか。
夕張駅の駅舎。このように、魅力的な駅舎や各駅に点在する炭鉱遺産など、夕張支線には様々な魅力が詰まっています。
台風の被害も乗り越え、完全復旧を果たした石勝線に乗ってみよう!
石勝線のトマム駅から新得駅の間は、2016年夏に襲った台風10号によって路盤の流出や流木による被害などを受け、2016年末まで全く通ることができない状況が続いていました。台風の被害からおよそ4ヶ月後の2016年12月には復旧作業が完了し、現在では全線で通常どおりの運行がなされしています。
石勝線の全線再開を告げる看板。2016年8月から12月まで、約4ヶ月間もの運休を余儀なくされていました。
支線を含めて150キロほどの道のりとなる石勝線は、北海道の広大な内陸部を駆け抜けていく路線です。山々の景色や平野の雄大さ、そして夕張川をはじめとした川の織りなす景観など、北海道の内陸部に広がる自然を堪能することができます。
夕張川の様子。雄大な山や流れゆく川など、石勝線の沿線には豊かな自然が息づいています。
石勝線は全線においてほとんど利用者がいない駅が多く、ローカル線の雰囲気が最後まで続く路線となっています。北海道の内陸部をゆったりと列車に揺られ、作り出される自然の妙技や、かつて栄華を極めた炭鉱の歴史に思いをはせながら、いつもと違う雰囲気の旅をしてみてはいかがでしょうか。
むらはし
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