石勝線の南清水沢駅を紹介します。「夕張支線」の2つ目の駅である南清水沢駅は、北炭夕張新炭鉱の近くに位置している駅です。炭鉱事故、そして人口減少という夕張市の歴史を振り返る意味でも、見逃せない駅となっています。
夕張の住宅地を眺めながら、夕張支線は進む
沼ノ沢駅までは自然の景観がメインだった夕張支線は、沼ノ沢駅を過ぎると夕張市の住宅地の姿を車窓に映しながら進んでいくことになります。夕張市が財政再建団体となった2006年以降、夕張市の人口減少には拍車がかかり、現在では最盛期の12万人近い人口の15分の1、およそ8,000人程度の人口となっています。
人口減少だけでなく、夕張市は全国でもトップクラスとなる46%もの高齢化率に悩まされており、町全体の活気は失われたままとなっています。住民のほぼ2人に1人が65歳以上という衝撃的な高齢化率は、今後さらに上昇していくことが考えられます。
かつて活況を呈していたとは思えない静寂に満ちた街並みは、秋から冬にかけて訪れるとより荒涼としたもの寂しいものとなります。そんな光景にちょっとした風情を感じながら、ゆっくりとローカル線で北上を続けていくのも趣きがあると言えるでしょう。
南清水沢周辺の住宅街。住宅街とはいえ建物は点々と建っているだけにすぎず、冬の寂しい雰囲気と相まって悲しい気持ちになります。
打ち捨てられてしまったかのような雰囲気すら漂うこの町でも、住民の方々は毎日元気に生活を送っています。
国道452号線沿いに面した小さな駅!南清水沢駅とは?
夕張支線の2番目の駅である南清水沢駅は、目の前に国道452号線が通っています。夕張市の人口が12万人程度にまで増え続けていた1962年に、南清水沢駅は開業しました。当時、南清水沢地区には現在よりも数多くの建物が軒を連ねていたこともあり、南清水沢駅は炭鉱関連の輸送だけでなく、住民にとっての重要な交通手段のひとつとしても活用されていました。しかし夕張市の人口減少が顕著なものとなっていくにつれて利用者数は減少の一途をたどり、国道が整備されたこともあって、現在ではほとんど利用者がいない駅となっています。
利用者がほとんどいない南清水沢駅ですが、現在でも簡易委託という形で窓口業務が行われています。夕張支線の利用者への切符の販売の他、廃線間近の夕張支線を巡っている方への切符の販売などもこちらで行われています。
南清水沢駅外観。全体的に古びれた印象の建物となっています。石勝線の川端駅、滝ノ上駅と同じタイプの駅舎です。
駅構内の様子。切符などを取り扱う窓口も設置されています。
トイレもあります。小さいながらも比較的清潔です。
訪れた日は窓口が休業中。窓口の前には、鉄道ファンのための交流ノートなども設置されています。
切符の販売に関する案内が詳しく書かれています。
ホームの様子。1面だけの小さなホームです。すぐそばを国道が走っているのが分かります。
夕張方面の線路。遠くに山影を望むことができます。
ホームから見た駅舎。
駅のすぐ横には、小さな商店と踏切があります。
南清水沢駅周辺スポット:夕張新炭鉱
南清水沢駅から徒歩およそ10分。夕張川を越えて少し歩いたところに、夕張新炭鉱の跡地が残されています。夕張新炭鉱は、93人もの死者を出し、夕張市の炭鉱閉山を決定づけた事故「北炭夕張新炭鉱ガス突出事故」の現場となった炭鉱です。
事故が起こった1981年当時、炭鉱事業の斜陽化にともなって補助金の打ち切りなどが検討されていた北炭夕張の炭鉱では、安全軽視の無理な作業が常態化していました。その結果、新夕張炭鉱でガス突出事故が発生。さらに坑内で火災が発生したことにより、坑内に閉じ込められてしまった労働者たちの救助活動もままならない状況となっていました。「人命切り捨て」の猛反発を受ける中で、会社は坑内火災の消火のために注水を行うことを決定。構内に取り残されていたすべての炭鉱労働者が帰らぬ人となりました。
この事故以降、炭鉱事業の衰退には拍車がかかり、結果的に夕張市から炭鉱は姿を消してしまうこととなりました。夕張新炭鉱の通洞口は現在も残されており、通洞口の脇には慰霊碑も建てられています。
夕張川を望みながら橋を渡り、夕張新炭鉱へ東に向かって歩きます。
北炭夕張の社名が書かれた看板が、現在も残されています。
夕張新炭鉱の通洞口。現在は鉄格子で閉鎖されており、中に入ることはできません。
通洞口の横の小高い丘の上に、慰霊碑があります。
慰霊碑のある丘の上からは、南清水沢周辺の街並みを一望することもできます。
南清水沢駅のまとめ
南清水沢駅はかつて夕張市が発展していたころに、地域住民を運ぶための大切な駅のひとつとして機能していました。近くに夕張新炭鉱があることと合わせて、夕張市の炭鉱、そして人口減少の悲しい運命を考えることのできる駅だと言えるでしょう。
南清水沢駅からさらに夕張支線は北上を続けていきます。次回は、南清水沢駅から1キロ程度しか離れていない場所にある「清水沢駅」まで、ゆっくりと進んでいきましょう。
むらはし
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